top of page

​ブログパーツを利用しているため、CP別リンクは下記のタグで追ってください。

熱中症の罠

メガミド。熱中症にかかった御堂さんと調子に乗る眼鏡。短いSSSS

____________


だるい…

気付くと、佐伯の部屋でいつの間にか横になっていた。


最後の記憶が曖昧で、はっきりしないもどかさを感じて部屋をぐるりと見回していると、

鈍く感じる頭痛と嘔吐感に襲われ… 己の状況にただ驚くしかできなかった。


「御堂さん、起きたんですか?」


そっと、佐伯の冷たく優しい手が私の額に触れ 様子を伺ってくる。

気持ちいい…

己に熱があるとは思えないが、彼の程よい温度差ある冷たさは 今までの疲れと暑さを癒してくれるようで、離れがたいとすら 思ってしまっていた。

彼の体温を味わいながらも、やはり気になるのは 己の状況であり、ぽつりと呟いていく。


「私は…一体…」


怠く、動かす事のできない体に戸惑いつつ 彼を見つめていると苦笑いを浮かべながら ため息を零して…


―――覚えていないんですか?


そう、言ってきた。


「帰宅と同時に倒れたんですよ…御堂さんは。 具合が悪いなら最初に言ってくれ。心臓に悪い。」


キツめの言葉で優しくぶっきらぼうな暖かみのある彼の声に安心しながら

――悪かった…そう言うと共に、

不思議な感覚をようやく自覚していった。


己の手がかろうじて動けるようになったと思ったら、そこらじゅうに氷が敷き詰められているのだ。

両脇に添えられた氷は、これでもかと強調しているように 大きさもあって、呆れを産むほどで


「な…なんだこれは…!!」


さすがに…叫ばずにはいられなかった。



「何って…御堂さんは熱中症なんですからね、当然の処置をさせていただいたまでですよ」


軽く、なんでもないように言いながらも どこか楽しそうにしている姿が

疎ましい。

怪訝な顔をしながら、彼を様子見ていても状況はかわらず、 ただ 氷がなくて大変だったあらましを説明してくるのみで 氷をどかす気配がまるでない。

また少し、自由になってきた腕を動かしていくと・・・

その動きで 今度はありえない場所にまで氷の存在を認識して…さらにいたたまれなくなり、顔を真っ赤にして 叫んでいってしまった。


「なんていうところに氷を置くんだ…!!君は…!!」


気が遠くなりそうになる状態、

それは…下肢の己自身にまで氷が敷き詰められていると言う事だった。

全裸にもなっている身体を自覚してしまえば、恥態この上ないないと・・・隠れてしまいたいと思うのは当然で、佐伯に睨みついていくが到底敵う相手であるはずもなく。


「…文句があるなら、いきなり倒れた自分に言う事だな…」


なにが可笑いのか、ニヤニヤ笑いながら私の恥態を鑑賞しながら言ってくるだけだった。


それでも、まだ変に触って来なかっただけ翌日の事を思えばマシだったのかもしれない。




熱中症と言っても、一時のものだったのか 翌朝に目を覚ます頃には、すっかり元気に身体を起こす事ができた。

横で寝ている佐伯を起こさないよう、ゆっくりとベットから離れ シャワーを浴び、休日である今日…日曜のスケジュールを脳裏で組み立てていった。

したい買い物リストを考えたりしながら汗を流していく。

そうだ、いつものワインバーで、新しいものが入荷したと 報せもあったから行くとするか。

休日は休日で、趣味のワインセラーの世話などもあるが、これはまた別格で楽しいものだ。

新しいワインが、どんなものか、胸に膨らませているせいで、機嫌もよく鼻歌まじりに

続けて汗を流していると・・・

ガチャリとノックもせずに佐伯が入ってきた。


ゾクリと背中に悪寒が走ってくる。

身体を強張らせて、嫌な予感に 逃げようとしたが

両手を拘束するようにタイルの壁へと 押さえ込んできた。


「いきなりなんなんだ?!…っ……っんぅ…」


濡れきった身体もお構いなしに、縋り付くように口を割って 舌を口腔を支配していく佐伯。

キスをされている…

自覚していく頃には、行いに没頭して 次の刺激を期待するまでになっていた。

しかし…佐伯は愛撫にすら興味がないのか それとも様子を伺っているのか ただ、私を凝視して。


「・・・ヒヤヒヤさせるな…」


曇らせた顔で・・・彼は、心配したというような台詞を吐いていったのだった―――。


______



思考回路がストップしそうになる。

まさか、まだ心配をしていてくれたのだろうか?

あまりにも驚く彼の行いに、ゆっくりと、彼の表情を様子見た。


「・・・佐伯・・・??」


だがそれは、逆に彼まで釣られたのか

ただ大人しくなるだけで、 その次の行為を読む事はできなかった。

但し、朝の第一声が心配したような言葉だったのだから おそらく私を屈服させるという事は・・・ないだろう。

微かに期待にも満ちた考えで、ゆっくりと彼を見つめなおしていくと、

なにやら罰の悪そうな顔をしながら、そして心配そうに彼もまた、私を伺っていて、

また聞かずにいられなかった。


「どうしたんだ・・・?」


問いただしていくがそれでも、彼からの返事がかえってくる気配がない。

ふと、ゆっくりとこれまでの経過を思い出せば、熱中症の事に間違いはないのだろうけれど この行いが・・・妙に、ある・・・過去の、屈辱であった日々と重なって見えて、少し不安を覚えてしまったのだった。


疲労した私の体と、突然の別れと・・・空白にも似た一年のあの日々を。

まさかあの時の事を、彼はまだ 気にしているのだろうか・・・??

軽い気だるさを残した体調を思えば、思い過ごしなだけかもしれないが

妙なデジャヴェに襲われてしまっては、どうしようもなく 不安だけが掻き立てられてしまう。

だが、まさかそのまま口にしていくのも躊躇わずにはいられなくて

キュッ、と歯を鳴らしながらまた・・・強張らせていってしまった。


「昨日の今日なんだから・・・あんまり無茶しないでくれ・・・」


考えすぎている様子に、ようやく口を開いてくれたのかもしれないが、

それにしては普通すぎる言葉に なぜか、ホッとしてしまった。

やはり昨日の症状を思い出して 心配していてくれただけなのだろう。

一気に安心して、 気を抜かしていると、私は今度は、自嘲じみた思考をめぐらせて

ふたたび、彼を見つめていった。

・・・今もまだ、じっと私を見つめている・・・。

恋人なら、そういう事も必然といえばそうなのかもしれないが、

熱心に私の体調を伺う視線が熱く感じて、なんだか居た堪れなくなってきそうになる。


「・・・だ、大丈夫だから・・・っ・・・その・・・心配かけてすまない・・・佐伯・・・」


顔を真っ赤にしながら・・・それに、シャワーを浴びるぐらいの気力もついてきているのだから 心配するな・・・と、付け加えて 言っていくと、彼は少し納得してくれたのか

―――そうか・・・と、言ってくれた。

だが、その言葉は 単に、合図だったのか。 ならば、と 私の体をさらにしつこく触り・・・


「あなたの体が本当に無事かどうか確かめてあげますよ」


ニヤリと薄笑いを浮かべながら、私の足を持ち上げてくるのだった・・・。



「ま、まて、さえ、き!」


「待ちませんよ。俺だって、怒ってるんですからね。」


「はっ?! な、なにを言っ、て、あっ!」


にゅるり、と彼の舌の存在感をダイレクトに感じるのは、下肢の…アナルだ。

丹念に舐め、私の体調を気遣うかのように、にゅく、にゅく、としつこく舌で私を犯していく。


「あっ!ああっ、あう、や、さえ、嫌だ、こんなっ、あああっ、」


「っ。ここは…熱いですね。やはり、まだ熱があったのでは・・・?」


粘膜のある身体の部位は本来、額や腕など外気にふれる場所でない事もあり、熱っぽく感じるものだ。

それは彼も解っているはずなのに、煽ってくるのだからたまったものじゃない。


「何をバカなことを!いい加減に…うわ!」


今度は、私を抱きかかえ、身体を彼の上に馬乗りさせられた。

かと思いきや、普通にキスをしてくるのだから・・・

お仕置きをされているのか、ただ奉仕してくれているのか全く想像がつかない状況に私は心のなかで苦笑いをせざるを得なかった。


「いい光景ですね、御堂さん」


「・・・何がだ?」


「解っているのか?ここ、風呂場ですよ」


降り掛かってくる言葉に、一瞬で理解していく。

ここは私と彼が同居するために新しく購入したマンションの一室の風呂場。つまり、この風呂場はガラス張りの窓で半分は占められていており、私の背中側には大きめの鏡があるのだ。

窓側からは、誰かに見られるかもしれないという恐れに似た感情もあるし、鏡に至っては・・・

佐伯に、全てをさらけ出して見せてしまっているのがいやでも解ってしまう。


「っ!ま、待て!せめてベッドに・・・」


「移動すると、俺が言うとでも思ったか?ダメだな。これはお仕置き、なんだから」


「ひゃうっ!」


つい、と先程舐められたアナルを彼の指で支配していきながら、なんてこともない事を彼は言い出した。


「俺はね、怒っているんですよ。御堂さん。」


「・・・さすがの私にもそれくらいは解っている。っあ、

だから、ふっ、あ、昨日、の、熱中症の・・・、対処だって、大げさにやってみせたのだろう?」


彼が何を心配しているのか解らないが、私自身の油断で熱中症になったのは確かであり、それに対して怒っているものと思っていた。けれど、佐伯はアナルから離れる様子がないまま、口をひらいていく。


「確かにそれもある。

だが・・・あんた、気づいてないのか?

藤田はまだ、俺達の関係を知っているようだからいいものの…

他の社員達まで貴方の不調からくる気だるい表情に、色っぽいとか言って、顔を赤らめていたんだぞ。

不意であってもなんでも、あんたの色っぽい表情は、俺だけのものだ。

・・・絶対に、誰かにその顔を見せるなんて許さない」


はっ?

そう思わずにいられない、佐伯の言葉。迂闊にも、その言葉から嫉妬したーーー

などと言わんばかりで、なんだかくすぐったい気分にさせられた。


「・・・さえ…いや、克哉。それは、嫉妬した、と告白しているようなものだが?」


彼の手がゆっくりと、私の背中に回してぎゅっと抱きしめていくのを感じていくと。


「・・・そうだよ…嫉妬、した。」


思いもかけず素直で、さすがの私もこれには笑わずにいられなくて。

抱きついたその手を、そのまま享受していくのだった・・・。



「・・・克哉。私の見目がどうであろうと何だろうと、心は貴様にしかない。

こんな年になると、偶に親に結婚はしないのかと言われることもある。だけど、結婚など考えられない。

・・・貴様が、いるからな」


「・・・みど・・・」


「だが。それでも、だ。ここでセックスするのは・・・さすがに嫌だ。

貴様は、私を心配したと言った。嫉妬したとも。

・・・ここは風呂場だ。タイル貼りだから、身体も痛みかねないし・・・

だから、続きをするのなら・・・続きは私のベッドで、んんっ?!」


顔を真赤にしながら言う赤裸々な告白をしきらないうちに、再び佐伯にキスをされた。


「・・・敵わないなぁ、御堂さんには。解りました。ベッドに行きましょう。」


そう言いながら、ぽつりとこっそり独り言じみた言葉が聞こえてくる。

・・・それに、風呂場でのぼせられたら、心臓に悪いからなーーーー


などと。


開いた口が塞がらないとはこの事だ。だが怪我の功名と言うべきか・・・

彼は私の意志を少しは尊重してくれたのだろうかとも少しは思うのだった。









結局、ベッドに移動した後は最後まで抱かれた事もあり、

最後の処理まで、彼にされてしまい さらに恥ずかしくなって、予定にあった休日は ベッドの中で過ごす事となってしまったのだった。

もちろん、ここまでさせたのだから 買い物など日常的に必要な事は全て佐伯に託けてやらせたが、

個人的な・・・

ワインの買い物については、楽しみにとっておいていただけに 残念と思わざるを得なくて

佐伯を、遠目で睨みつけながら、

いつ引き取りに行こう・・・と、思いをめぐらせていた。


これだけ暑い夏の日だから、たまには白いワインが待っているのもいいかもしれない

それとも・・・私の好みの赤が、待っているのだろうか・・・??



その予感をしているのは、おそらく未だ溶けかかっているだけの氷か

それとも、暑い日差しか・・・


とにかくも、もう熱中症にだけは、なってはなるものかと 固く決意していった、一日だった。




END

最新記事

すべて表示
モーニング・コール

メガミド。短編集になるはずだった作品の1つ。もちろんWEB公開は初出。 寝起き?ドッキリエッryなメガミド。甘い。 ____________________ これで何度目の朝がきただろう。 自分の体がどこか別の場所にでも置かれたかのように重くなっていくのはいつもの事とはいえ...

 
 
 
RAIN

御克。無印後→ファンディスク直前の出来事。ちょっと仄暗い。BestEND後からの臆病な純愛変異ENDもおもしろいかもと書いたもの。 / お蔵入りになった短編集(未公開)の1つ。 _________________________...

 
 
 
忘却の果て~another door 1

メガミド 「因果応報」後。シリアス。おそらく長編。 (1話のみ救出した為後日改めて続きを書きます) ____________________ 気がつくと、薬品臭い匂いと白い壁に覆われた部屋に俺はいた。 ここは何処なのだろう。 記憶を辿ろうにも、頭痛が邪魔をして...

 
 
 

コメント


©2023 direction  Wix.com 

© Copyright 葉鯆処 / 瑞祥啓可®™
bottom of page